早いものでもう3月。日もだんだんと長くなり、春のおとずれを感じ始める季節です。
日に日に早まる日の出前、明け方の空で「明けの明星」金星が、非常に明るく輝いています。
太陽から見かけ上最も離れる西方最大離角となりますが、高度はあまり高くなりません。中旬から下旬にかけては、金星に火星や土星が近づきます。月末には、これらの惑星たちに、新月に向かう細い月が並んで見られます。いずれも、比較的空の低い位置での現象であるため、観察には見晴らしの良い場所が適しています。
3月10日には月面Xが見られます。
月面Xとは、上弦の月の頃、クレーターの縁の部分に太陽光が当たって、月の明暗の境に「X」の文字が1時間程度浮かび上がる現象です。3月10日は16時15分頃から約1時間が観測のチャンスです。
3日 | 新月 |
5日 | 啓蟄(太陽黄経345度)/木星が合 |
10日 | 上弦 |
13日 | 海王星が合 |
18日 | 彼岸の入り/満月 |
20日 | 金星が西方最大離角 |
21日 | 春分の日/春分(太陽黄経0度) |
25日 | 下弦 |
惑星の見どころ
水星
日の出前の東の低空に位置していますが、高度が低く観察は難しいでしょう。
金星
日の出前の南東の低空に見え、20日に西方最大離角となります。明るさはマイナス4.7等からマイナス4.4等。
火星
いて座を東に移動し、上旬のうちにやぎ座に移ります(順行)。日の出前の南東の低空に見え、明るさは1.3等から1.1等。
木星
みずがめ座を東に移動しています(順行)。月初は日の入り後の西の低空に位置していますが、5日に合となり、以後は日の出前の東の低空に位置するようになります。見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。
土星
やぎ座を東に移動し(順行)、日の出前の南東の低空に位置しています。下旬になると高度がやや高くなり、見つけやすくなります。明るさは0.8等。
※国立天文台Webサイトより引用
明け方の空で輝く金星
1月から明け方の空に見えている金星が、3月20日に西方最大離角(※最大離角とは、地球よりも内側の軌道を公転している内惑星が、地球からの見かけ上太陽から最も離れること。)となります。
内惑星のひとつである金星は太陽から大きく離れた方向には現れないため、金星が真夜中の空に見えることはありません。日の入り後の西の空、あるいは日の出前の東の空に見えます。西方最大離角の頃の金星は、「明けの明星」として見えています。
今月の金星は、2月後半に約25度(東京での日の出時)の高度に昇ったのをピークに、わずかに高度を下げながら日の出前の南東の空で輝いています。一般的には、最大離角の前後は金星の高度が高くなり、最も目につきやすくなると言えます。しかし、太陽系天体の高度が高くなる条件(春の夕方、秋の明け方)で起こる最大離角では金星の高度は40度にも達しますが、春の明け方にはさほど高く上がりません。こうした変化は、地球の自転軸が黄道面(地球の公転面)に対して傾いていることで生じます。
金星の輝く明け方の空に、今年の終盤に主役となる火星が見えています。
南東の方角で日の出時の高度を徐々に上げていく火星は、金星とすれ違うように移動していきます。
16日には約4度の離角(観測点から見て二つの天体がどのくらい離れているかを表す角度。角距離。約4度は、月の見かけの直径の8倍程度。)で並んで見えます。見た目では近くに見えていますが、地球の一つ内側を回る金星と、一つ外側を回る火星、地球の両隣の2惑星には、この時1億9千万キロメートル近い奥行きの違いがあるのです。地球のお隣同士の惑星であってもこれほどまでに距離があると思うと、改めて宇宙の広さを感じますね。
この日の火星の等級は1.2等。マイナス4.5等と大変明るく輝く金星とは190倍もの明るさの差があり、色合いも大きく異なります。比べると金星がとても明るいこともあり、薄明で空が明るくなるにつれて火星が肉眼で見えづらくなった場合には、双眼鏡や小さな望遠鏡を使うと見えやすくなります。
地平線近くには、土星も現れています。3月末から4月上旬には火星、金星と近づいていくので、毎日の位置の変化にも注目して観察してみましょう。
明け方の空で月が惑星たちに接近
28日から29日にかけて、惑星たちが形作るトライアングルの近くを新月前の細い月が通り過ぎていきます。
日の出前の南東の低空で並んでいる金星と火星に、下旬になると土星が高度を上げて近づいてきます。マイナス4.4等の圧倒的明るさで輝く金星と、それぞれ1.1等、0.8等と似たような明るさの火星、土星が毎日少しずつ位置関係を変えていきます。29日には、金星と土星が約2度(月の視直径の4倍程度)まで接近します。
月と、火星、金星、土星というにぎやかな天体の集結ですので早起きしてぜひ日の出前の空を眺めてみてください。ただし、高度が低いため、この天体の共演を楽しむにはごく低空まで視界の開けた場所が望ましいでしょう。