2023年8月の天体情報

猛暑のまま迎える8月。
日が暮れてもまだ暑さは残っていますが、空には涼しげに瞬く夏の星がいっぱいです。
8月の宵の時間帯には、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブが描く夏の夜空の風物詩「夏の大三角」が空高く見えています。十分に暗い空ならば、夏の大三角の辺りから南の低い空へと続く天の川の淡い光も見えることでしょう。ペルセウス座流星群は、13日から14日にかけて見ごろを迎えます。夜半から明け方にかけて多くの流星を見ることができそうですので、ぜひ早起きして眺めてみてください。土星が27日に衝となり、観察しやすい時期を迎えます。

2023年8月の星空
2日満月
8日立秋(太陽黄経135度) / 下弦
10日水星が東方最大離角
13日金星が内合 / ペルセウス座流星群が極大(見頃は13日未明と14日未明。1時間に30個程度。月の影響は小さい。)
16日新月
22日伝統的七夕
23日処暑(太陽黄経150度) / 水星が留
24日上弦
27日土星が衝
29日天王星が留
31日満月(2023年で最も近い満月)

惑星の見どころ

水星

水星

日の入り後の西の低空に位置しています。10日に東方最大離角となりますが、日の入り30分後の高度は10度にも満たず、観察は難しいでしょう。その後はさらに高度が下がり、観察しにくくなります。

金星

金星

日の入り後の西の低空に位置していますが13日に内合となり、以後は日の出前の東の低空に位置するようになります。内合前後は見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。月末に近づくにつれて徐々に高度を上げ、目に付きやすくなります。20日から31日までの明るさはマイナス4.0等からマイナス4.6等。

火星

火星

月初はしし座を東に移動し、中旬にはおとめ座に移ります(順行)。見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。

木星

木星

おひつじ座を東に移動しています(順行)。夜半前に東の空に昇り、日の出前の南東から南の空高く見えます。明るさはマイナス2.4等からマイナス2.6等。

土星

土星

みずがめ座を西に移動しています。(逆行)。27日に衝(しょう)となり、見頃となります。真夜中の南の空に見えます。明るさは0.6等から0.4等。

国立天文台Webサイトより引用

スター・ウィーク!星空に親しむ週間

スター・ウィークとは、「子どもから大人まで幅広く星空に楽しんでもらおう!」というスター・ウィーク実行委員会主催のキャンペーンのことで、毎年8月1日から7日に行われています。
8月上旬は全国的に梅雨が明け天候が安定する頃で、星空を眺めるのにとても適しています。
毎年スター・ウィークの期間を中心に、全国各地天体観望会などのイベントも開催されるので、この機会に「星空に親しむ一週間」を堪能してみましょう、

また、太陰太陽暦(いわゆる旧暦)の7月7日にちなんだ、かつての七夕(たなばた)の頃を、国立天文台では「伝統的七夕」と呼んでおり、今年は8月22日が「伝統的七夕」の日にあたります。現在の暦の7月7日は、多くの場合、梅雨のさなかにあたりますが、伝統的七夕の頃は夏空が広がり、星を楽しむのに良い季節です。ぜひ星空を見上げてみてくださいね。

伝統的七夕の日、日暮れの頃には上弦前の月が南西の空に見えています。夜空が十分に暗くなり星々が輝き出すと、頭の真上近くに七夕にちなんだ織姫星(おりひめぼし、こと座の1等星ベガ)と彦星(ひこぼし、わし座の1等星アルタイル)を見つけることができます。夜空の暗い場所ならば、夜が更けて月が沈む頃には織姫星と彦星の間から南の空へと淡く続く天の川の姿も見えることでしょう。

伝統的七夕 2023年8月22日20時頃 東京の星空

8月は二度も月が土星に接近!

月が、見頃を迎えている土星に接近します。今月は8月3日深夜から4日未明にかけてと、8月30日宵から31日未明にかけての2度にわたって、月と土星が並んで見えるチャンスが訪れます。

月が土星に接近 2023年8月2〜4日23時頃 東京の星空

8月3日の夜は、20時頃に月と土星が地平線から昇ってきます(東京、以下同じ)。このため、高い空に昇ってくる深夜の時間帯を待った方が見やすいでしょう。

月が土星に接近 2023年8月29〜31日21時頃 東京の星空

8月30日の場合は、地平線から月と土星が昇ってくるのは18時頃と早まり、宵の時間帯には接近した2天体の様子を楽しむことができそうです。また、31日は2023年で最も近い満月となるので、とても華やかな競演になりそうです。
8月最後の夜は素敵な夜空が見られそうですね。

ペルセウス座流星群が極大!(2023年8月)

ペルセウス座流星群と放射点 2023年8月13日、14日午前3時頃 東京の星空

三大流星群の一つであるペルセウス座流星群が見ごろを迎えます。
2023年のペルセウス座流星群の活動(「流星群が活動する」とは、その流星群に属する流星が出現すること、「流星群の活動が活発になる」とは、その流星群に属する流星の数が多くなることです。)は、8月13日17時頃に極大(流星群自体の活動が最も活発になること)となることが予想されています。この時間帯は日本の昼間にあたり日本では観察できませんが、この前後の観察に適した時間帯には、それなりに多くの流星が見られそうです。

普段より目立って多くの流星を見ることができるのは、11日の夜から14日の夜までの4夜程度でしょう。いずれの夜も、21時頃から流星が出現し始め、夜半を過ぎて薄明に近づくにつれて流星の数が多くなると予想されます。最も多く流星が見られるのは、14日の夜明け近く(東京では3時台、以下同じ)と考えられ、このときに空の暗い場所で観察した場合の流星数は、1時間あたり30個程度と予想されます。この前日の13日の夜明け近くにも多めの流星が期待され、空の暗い場所で1時間あたり25個程の流星が見えそうです。各夜とも夜半過ぎから明け方の時間帯に月が昇ってきますが、下弦(半月)を過ぎた細い月で、月明かりの影響はそれほど気にせず観察できそうです。

ペルセウス座流星群の流星は、ペルセウス座の付近にある放射点を中心とするように放射状に出現します。
「放射点」とは、流星群の流星が、そこから放射状に出現するように見える点です。流星は放射点から離れた位置で光り始め、放射点とは反対の方向に移動して消えます。流星の数は放射点の高度が高いほど多くなり、逆に低いほど少なくなります。放射点が地平線の下にある時間帯には流星の出現は期待できません。また、放射点は概念上のものですので、目で見てそこに何かが見えるわけではありません。

流星群が一番多く見られるのは深夜ですが、ちょうどお盆期間でお休みの方は夜更かしして観察するのも良いかもしれませんね。
流星は放射点付近だけでなく、空全体に現れます。いつどこに出現するかも分かりませんので、なるべく空の広い範囲を見渡すようにしましょう。また、観察の15分程前から携帯の画面などは見ず、目が屋外の暗さに慣れるようにしておきましょう。
屋外で観察する場合は、レジャーシートを敷いて地面に寝転んだり、背もたれが傾けられるイスに座ったりすると、楽な姿勢で観察できます。事故に遭わないよう十分注意して、マナーを守って観察をしてくださいね。

土星が見頃(2023年8月)

環(わ)のある惑星として人気の土星が8月27日に「衝(しょう)」となり、観察の好機を迎えます。衝とは、太陽系の天体が、地球から見て太陽とちょうど反対側になる瞬間のことです。衝の頃の土星は、地球との距離が近くなるなどにより明るくなり、衝の前後数日間は0.4等という明るさで夜空に輝きます。さらに、見かけの直径(視直径)も大きくなっていて、望遠鏡で拡大すると見ごたえのある様子を観察できるでしょう。さらに、衝の頃の土星は、太陽が沈む夕方の頃に東の空から昇り、太陽が昇る明け方の頃に西の空に沈むので、一晩中見ることができます。観察しやすいシーズンと言えます。

土星は、美しい環を持つ惑星です。木星、天王星、海王星にも環がありますが、小望遠鏡で見事な環を見ることができる惑星は土星だけです。望遠鏡を持っている人はぜひ土星に向けて、他の惑星とはまったく違う興味深い姿を楽しんでみてください。大きな望遠鏡で見ると、環の構造や本体の縞模様なども見えてきますので、地域の天文台や科学館などが開催する天体観望会に参加するのも良いかもししれませんね。

土星の環の傾きの変化

土星の環は約15年周期で傾きが変わり、その開き方が変化して見えます。2017年頃には環が最も開いていましたが、2023年は開き方がだいぶ小さくなり、細い環となって見えるようになりました。2年後の2025年には環を真横から見ることになります。立派に見える土星の環ですが、実はたいへん薄いため、真横から見ると環が一時的に見えなくなります。もし望遠鏡で土星を見る機会がありましたら、このような環の見え方の変化にも注目してみましょう。
2年後の土星に環はほとんど見えませんが、今年は土星のイメージのままの環なのでぜひ今年の土星を観察してみてくださいね。

2023年 地球から最も近い満月(2023年8月)

2023年満月の距離のちがい

今月8月31日の満月は、2023年中で地球から最も近い位置で満月になります。
一方、今年2月6日の満月は、2023年で地球から最も遠い満月でした。

月は8月31日0時54分に近地点(1公転の間で月が地球に最も近づく点を「近地点」、地球から最も遠ざかる点を「遠地点」)を通過し、約10時間後の10時36分に満月(望)となります。満月のときの地心距離は約35万7300キロメートル、月の視直径は約33分26秒角です。

2023年 月の地心距離の変化と満月

地球の周りを公転する月の軌道は楕円形をしているため、地球と月との距離は一定ではありません。さらに、月の軌道は太陽や地球などの重力を受けて刻々と変化しています。そのため、満月や新月のときの距離は、上の図のように毎回異なります。8月31日の今年地球に最も近い満月は、2月6日の今年最も遠い満月に比べて視直径が約14パーセント大きく、光っている面積も約29パーセント広く(その分明るく)なっています。しかしながら、実際の夜空に月を二つ並べて比較することはできないため、その日の月を見ただけで大きさの変化に気づくのは難しいでしょう。それぞれの日に、同じカメラ、同じ画角のレンズで撮影した写真を比較してみるとよくわかります。
なお、今月8月2日の満月の位置も地球にかなり近く、この時の地心距離は35万7500キロメートルです。8月31日の満月よりも200キロメートルほど遠い位置での満月ですが、その差はわずかです。

最近は、地球に近い満月に対して「スーパームーン」という名称がよく使われています。スーパームーン自体は定義があいまいなのですが、このような言葉を聞いたことによって、月や夜空を眺めてみたという方もいらっしゃることでしょう。なぜそのように月との距離が変化するのだろうといったことをきっかけに、宇宙のさまざまなことにも興味を持つともっと宇宙の神秘に触れてみたくなることでしょう。

8月は夏を彩る星座の他にも流星群など見どころが、たくさん!
日が暮れてもまだ暑さは残りますので暑さ対策をして今年の夏最高の星空を見つけてくださいね。

宙クリップ

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