残暑厳しい今年の9月。
熱帯夜の日もまだまだありますが、9月の宵の空には夏の星座。それを追いかけるかのように秋の星座が東の空から姿を見せ始め、夏から秋の移り変わりを星空からも感じることができます。
9月は月に注目です。4日に木星の近くに見えていた下弦前の月は、細くなりながら東へ東へと移動していきます。そして、12日に金星の近くを、14日に水星の近くを通り過ぎ、15日に新月となります。
21日には上弦前の月がさそり座の1等星アンタレスを隠す「アンタレス食」が日本全国で観察できます。さらに月は27日には土星の近くを通り過ぎ、29日は土星と木星の中間あたりで満月となります。
29日は中秋の名月ですのでぜひお月見を楽しんでくださいね。
1日 | 二百十日 |
3日 | 金星が留 |
5日 | 木星が留 |
6日 | 水星が内合 |
7日 | 下弦 |
8日 | 白露(太陽黄経165度) |
15日 | 新月 / 水星が留 |
19日 | 海王星が衝 / 金星が最大光度 |
20日 | 彼岸の入り |
21日 | アンタレス食(日本全国で見られるが、潜入は日の入り前) |
22日 | 水星が西方最大離角 |
23日 | 秋分の日 / 秋分(太陽黄経180度) / 上弦 |
29日 | 中秋の名月 / 満月 |
惑星の見どころ
水星
月初は日の入り後の西の低空に位置していますが、6日に内合となり、以後は日の出前の東の低空に位置します。中旬以降は高度が上がり、22日には西方最大離角となります。東京では9月20日から26日までは日の出30分前の高度が10度を超え、見つけやすくなります。9月20日から26日までの明るさは0等からマイナス0.7等。
金星
日の出前の東の低空に見え、19日に最大光度となります。明るさは月初にはマイナス4.6等、19日の最大光度にはマイナス4.8等に達し、月末にはマイナス4.7等となります。
火星
おとめ座を東に移動しています(順行)。見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。
木星
月初はおひつじ座を東に移動していますが(順行)、5日に留(りゅう)となり、以降は西向きの動き(逆行)に転じます。留のころには、星空の中での木星の動きが止まったように見えます。真夜中の東から南東の空に見え、明るさはマイナス2.6等からマイナス2.8等。
土星
みずがめ座を西に移動しています(逆行)。宵の南東の空に見え、明るさは0.5等から0.6等。
※国立天文台Webサイトより引用
月が木星に接近!
11月に衝を迎える木星が、夜半前の東の空で存在感を放つようになってきました。
明るい星の少ない秋の星座の領域で木星はとても目立っています。9月4日には、半月よりも少しふくらんだ下弦前の月が木星の近くに見えます。
日付が変わり、5日の夜明け前の空では、月と木星は南の空の高い位置まで移動しています。木星を追いかけるかのように冬の星座たちが空に昇り、東の低空には明けの明星・金星も見えてきます。きらびやかな星空が夜明け前の暗いうちに広がっています。早起きしてゴージャスな星空を眺めてから一日を始めるのも素敵ですね!
アンタレス食
9月21日に、さそり座の1等星アンタレスが上弦前の月に隠される「アンタレス食」が起こります。
地球の周りを公転している月は、地上から見ると星空を背景に東へ東へと移動しています。このとき月が背景にある天体を隠していく現象のことを、月による「星食」または「掩蔽(えんぺい)」といいます。星食は、天球上の月の通り道が近い、黄道付近の恒星でしばしば起こります。1等星などの明るい恒星の星食は肉眼でも観察しやすく、観察のチャンスとなります。
星食は日食と同じように見られる地域が限られますが、今回のアンタレス食は、日本全国で観察することができます。起こる時刻は場所によって異なりますので、下記の各地の予報を確認してください。
アンタレスが月に隠される「潜入」は、21日の17時過ぎに起こります。アンタレスは月の光っていない方の縁(暗縁)から月に隠されますが、日の入り前の明るい空の中で起こるため、潜入の様子を観察することは難しいでしょう。
アンタレスが月の背後から姿を現す「出現」の様子は、日の入り後の空で18時30分過ぎに観察することができます。アンタレスは、月の光っている方の縁(明縁)から姿を現します。予報時刻の少し前から観察を始めると、出現の瞬間を捉えることができるかもしれません。恒星は面積を持って見える惑星とは異なり点像にしか見えないため、一瞬で出現します。
西側の地域になるほど日の入りからあまり時間が経たないうち(空がまだ明るいうち)にアンタレスの出現を迎えるため、観察には双眼鏡や望遠鏡が必要です。月の光っている方の縁に狙いを定めてアンタレスの出現を待ちましょう。
日の入りから概ね1時間ほど経つと空がかなり暗くなります。このころ以降にアンタレスが出現する地域では月やアンタレスの高度が低いため、南から南西の空が地平線付近まで開けている場所で観察してください。
アンタレスの出現は肉眼でも見ることができそうですが、双眼鏡や望遠鏡を用いると、出現の様子がよりわかりやすくなります。
地点 | 潜入時刻 | アンタレス の高度 | 日の入り時刻 | 出現時刻 | アンタレス の高度 |
---|---|---|---|---|---|
札幌 | 17時24.0分 | 18.1度 | 17時35分 | 18時44.1分 | 11.5度 |
仙台 | 17時26.5分 | 22.7度 | 17時36分 | 18時49.8分 | 14.9度 |
東京 | 17時26.2分 | 25.4度 | 17時41分 | 18時51.2分 | 17.4度 |
京都 | 17時17.9分 | 27.4度 | 17時56分 | 18時44.8分 | 20.5度 |
福岡 | 17時06.8分 | 29.8度 | 18時18分 | 18時35.4分 | 24.9度 |
那覇 | 17時07.5分 | 37.3度 | 18時28分 | 18時33.8分 | 32.7度 |
水星が西方最大離角、観察のチャンス!
水星は、太陽系の最も内側を公転している惑星です。このため水星は、見かけの位置が太陽から大きく離れることがなく、見つけやすくなる時期は太陽からの見かけの位置が離れる「最大離角」前後に限られており、観察のチャンスが少ない惑星です。
9月22日に水星は西方最大離角を迎えます。東京では9月20日から26日の間、日の出30分前の水星の高度が10度を超え、見つけやすくなります。また、26日を過ぎて日の出30分前の水星の高度が10度を下回るようになっても、このころの水星は明るさがマイナス1等ほどあるため、9月いっぱいは見つけやすいかもしれません。
水星よりも空の高い位置には、金星がとても明るく輝いています。金星は、9月19日が最大光度(マイナス4.8等)です。水星探しとともに、明るい金星も楽しみましょう。
山や高い建物等で視界が遮られていると、空の低い位置までを見渡すことができません。低空にある水星を見つけるためには、東の空が開けている場所を選びましょう。低空に雲のない、良く晴れた日が観察には最適です。しかし、夜明け前のほの明るい空の中に水星を探すのは難しいかもしれません。そのような時は、双眼鏡を使うと探しやすくなります。双眼鏡を使う際は太陽を見ないよう、日の出の前には観察を終えるようにしてくださいね。
中秋の名月
2023年の中秋の名月は、9月29日です。
「中秋の名月」とは、太陰太陽暦(月の満ち欠けを元に日付が決められる明治5年まで日本で使われていた暦。)の8月15日の夜に見える月のことを指します。中秋の名月をめでる習慣は、平安時代に中国から伝わったと言われています。日本では中秋の名月は農業の行事と結びつき、「芋名月」などとも呼ばれることもあります。
今年の中秋の名月は満月と同じ日ですが、実は、中秋の名月と満月の日付がずれることは、しばしば起こります(例えば、2024年は、中秋の名月が9月17日、満月が9月18日と日付がずれます)。これは以下の理由のためです。
- 中秋の名月は太陰太陽暦の日付(新月からの日数)で決まるが、満月(望)は、太陽、地球、月の位置関係で決まる。
- 月の公転軌道が楕円形であり、新月(朔)から満月(望)までにかかる日数が13.9日から15.6日と大きく変化する。
また、太陰太陽暦の9月13日の夜を「十三夜」と呼び、日本ではその夜にもお月見をする習慣があります。十三夜は、「後(のち)の月」「豆名月」「栗名月」とも呼ばれます。今年の十三夜は、10月27日です。
中秋の名月のまんまる満月を眺めながら、皆でお団子を食べてお月見を楽しんでみてくださいね!