8月の夕方がすっかり暗くなる頃、夏の大三角が高い空に見えます。これは夏の星座を探す際の良い目印になるでしょう。空が十分に暗ければ、夏の大三角の付近から南の空へと広がる天の川の淡い光も見えるかもしれません。
10日の夕方には、関東地方より西の地域で月が乙女座の一等星スピカを隠す「スピカ食」が起こります。南西の低い空に注目してみてください。
ペルセウス座流星群は12日深夜から13日未明にかけてピークを迎えます。月明かりの影響がなく、観察に適した条件です。
15日(14日深夜)には木星と火星が非常に接近します。明け方までの間、明るい二つの惑星の共演を楽しむことができるでしょう。
4日 | 新月 / 水星が留 |
---|---|
7日 | 立秋(太陽黄経135度) |
10日 | 伝統的七夕 / スピカ食(東北地方南部と関東地方より西の地域で見られる ) |
12日 | 23時頃、ペルセウス座流星群が極大(見頃は12日深夜から13日未明。1時間に40個程度。極大の条件も良く、月の条件も良い) |
13日 | 上弦 |
19日 | 水星が内合 |
20日 | 満月 |
22日 | 処暑(太陽黄経150度) |
26日 | 下弦 |
28日 | 水星が留 |
31日 | 二百十日 |
惑星の見どころ
水星
月初は日の入り後の西の低空に位置していますが、徐々に高度を下げていきます。19日に内合となり、以後は日の出前の東の空に位置するようになります。下旬には徐々に高度を上げますが、見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。
金星
日の入り後の西の低空に見えます。明るさはマイナス3.9等。
火星
おうし座を東に移動しています(順行)。日の出前の東の空に見え、明るさは0.9等から0.7等。
木星
おうし座を東に移動しています(順行)。日の出前の東の空高く見え、明るさはマイナス2.1等からマイナス2.3等。
土星
みずがめ座を西に移動しています(逆行)。真夜中の南東から南の空に見え、明るさは0.8等から0.6等。
※国立天文台Webサイトより引用
スター・ウィーク、伝統的七夕
星空を楽しむ一週間
毎年8月1日から7日は「スター・ウィーク~星空に親しむ週間~」とされています。このスター・ウィークは、1995年から始まったキャンペーンで、多くの人々に星空の美しさを楽しんでもらおうという目的があります。8月の初めは、全国的に梅雨が明けて天候が安定する時期で、星空観察に最適な季節です。この期間中、全国各地で天体観望会などのイベントが行われます。
伝統的七夕の日にも注目
国立天文台では、旧暦の7月7日に由来する伝統的な七夕を「伝統的七夕」として広く知らせています。今年は8月10日がその日にあたります。現在の暦の7月7日は梅雨の時期と重なりがちですが、伝統的七夕の頃は天気が良く、星空観察に適しています。ぜひ夜空を見上げてみてください。
伝統的七夕の日には、日没後に南西から西南西の空に半月よりも細い月が見えます。夜が更けると、星々が輝き始め、天頂付近に七夕に関連する織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)を見つけることができます。そして、はくちょう座のデネブを加えた三角形が夏の大三角です。月が沈んだ後、空が十分に暗い場所では、織姫星と彦星を結ぶ線上に淡く広がる天の川も楽しむことができるでしょう。
スピカ食
おとめ座の一等星スピカが月に隠れる
伝統的七夕の日である8月10日の夕方、おとめ座の一等星スピカが月に隠れる「スピカ食」が起こります。
今回のスピカ食は、東北地方南部、関東地方、中部地方から西側の地域で観測されます。東北地方北部や北海道では、スピカ食は見られず、月とスピカの接近のみが観察されるでしょう。
この日の月は半月よりも細く輝いており、スピカは20時過ぎに月の暗く見える側(暗縁)から隠されます。この時、スピカは月の明るい部分から少し離れた位置で突然見えなくなるように見えるでしょう。この現象は肉眼でも観察できますが、双眼鏡や望遠鏡を使用するとより詳細に観察できます。スピカが再び現れるのは、月の明るい縁(明縁)からです。この瞬間は月の光の影響で肉眼では見づらいかもしれませんが、双眼鏡や望遠鏡を使うと観察しやすくなるでしょう。
今回のスピカ食は多くの地域で低い空での現象となります。スピカと月が見える南西から西の方向が開けた場所で観察することをお勧めします。
地点 | 潜入時刻 | スピカの高度 | 出現時刻 | スピカの高度 |
---|---|---|---|---|
仙台 | 20時29.8分 | 7.3度 | 20時38.2分 | 5.8度 |
東京 | 20時24.6分 | 10.1度 | 20時51.5分 | 4.9度 |
京都 | 20時20.5分 | 14.1度 | 20時51.0分 | 8.3度 |
福岡 | 20時13.0分 | 20.1度 | 20時52.4分 | 12.7度 |
那覇 | 20時12.1分 | 25.9度 | 21時13.5分 | 13.3度 |
月による掩蔽(星食)について
月は地球の周りを公転しており、私たちから見ると星空を背景にして東側へと少しずつ移動していきます。この移動中に月が背景にある天体を隠す現象を「掩蔽(えんぺい)」と呼びます。隠される天体が星(恒星)の場合、特に「星食」とも呼ばれます。星食は、天球上の月の通り道に近い黄道付近に位置する恒星を対象として頻繁に起こります。1等星などの明るい恒星が対象となると、肉眼でも観察しやすくなります。
今回の掩蔽で隠される恒星はおとめ座の1等星スピカで、「スピカ食」として知られています。今年は8月10日に起こるスピカ食のほか、12月25日未明にもスピカ食が観察される予定です(ただし、北海道の大部分では観測できません)。
ペルセウス座流星群が極大
夏の夜空を飾る流星群を楽しもう
三大流星群の一つであるペルセウス座流星群が見ごろを迎えます。2024年のペルセウス座流星群の活動のピークは、8月12日23時頃に予想されています。このため、12日深夜から13日未明にかけて、多くの流星が見られるでしょう。
特に多くの流星が見られるのは、11日の夜から13日の夜までの3夜です。いずれの夜も、21時頃から流星が出現し始め、夜半を過ぎてから明け方にかけて流星の数が増加することが予想されます。
12日23時頃の極大時刻には、それなりに多くの流星が見られるでしょうが、放射点がまだ低いため、暗い場所で観察した場合でも1時間あたり約25個程度の流星が見られると予想されます。最も多くの流星が見られるのは、13日の夜明け近く(東京では3時台)とされ、暗い場所では1時間あたり約40個程度の流星が期待されます。
12日と14日の夜明け近くにも、比較的多くの流星が見られる可能性があります。暗い場所で観察すると、1時間あたり約20個の流星が見られるかもしれません。また、各夜とも夜半前に月が沈むため、流星群が最も多く見られる夜半から明け方にかけて、月明かりの影響がなく、良好な観察条件となるでしょう。
流星は放射点を中心に放射状に現れますが、空全体に出現するため、どこにでも現れる可能性があります。そのため、広い範囲の空を見渡すようにし、最低でも15分は観察を続けると良いでしょう。レジャーシートを敷いて寝転んだり、背もたれの傾く椅子に座ったりすると、快適に観察できます。安全に気を付け、マナーを守って観察を楽しんでください。明るい惑星と欠けた月の会合は、夜明け前の空で美しい光景を見せてくれるだけでなく、月が地球の周りを公転し、恒星や惑星が日々少しずつ早く昇る様子を観察する良い機会にもなります。
より詳しく知りたい方は
国立天文台の解説資料をご覧ください(PDFが開きます)
木星と火星が接近
未明の空で接近する2惑星に注目!
8月に入り、木星と火星が未明から明け方にかけて見やすくなっています。この2つの惑星が日ごとに接近していき、8月15日未明(14日深夜過ぎ)に最も接近する予定です。
最接近の時刻は8月15日の0時頃で、その際の離角は18.3分角です。これは満月の見かけの直径(約30分角)の約60%の距離に相当します。ただし、この時間帯では2惑星はまだ低い空にあり、またはまだ昇っていない可能性があります。そのため、2惑星が見やすい高度に昇ってくる2時頃から夜明け前に観察するのが最適です(この時点での2惑星の離角は、2時に18.5分角、3時に18.8分角で、最接近の頃とほとんど変わりません)。
この時期の2惑星の明るさは、木星がマイナス2.2等、火星が0.9等で、木星の方が約17倍明るく輝いています。とはいえ、火星も夜空の一等星とほぼ同じ明るさであり、その赤みがかった色からも目立って見えるでしょう。
この接近の様子は肉眼でもはっきりと見られますが、双眼鏡を使うとさらに詳細に観察できます。また、低倍率の望遠鏡を使用すれば、同じ視野内で火星と木星を同時に見ることができ、木星のガリレオ衛星も観察できるでしょう。ガリレオ衛星は木星の周囲を公転しているため、時間が経つとともに位置が変わる様子も楽しむことができます。
木星と火星は最接近の当日だけでなく、その前後数日も比較的近い位置に見られます。今年の8月は、ぜひ木星と火星の共演を楽しんでみてください。
月が土星に接近
満月の頃、月と土星が接近する様子を観察しよう
8月20日は満月の日です。この日の夜から翌21日の夜にかけて、月が土星に接近します。月は土星よりも速く星空の中を移動していくため、20日の夜には土星の右側に見えますが、21日の夜には土星の左側に位置を移します。
この両夜とも、月と土星は夜の早い時間帯に東の空から昇り、翌朝には西の空へと沈んでいきます。ほぼ一晩中、月が土星の近くで輝く様子を観察できるので、ぜひ空を見上げてみてください。
月が火星、木星に接近
近づいている2惑星にさらに月が接近!
8月15日に接近した火星と木星ですが、8月下旬になっても比較的近い位置に見えています。そして、8月28日未明(27日深夜過ぎ)には、その2つの惑星に月がさらに接近し、3つの明るい天体が寄り添う見事な光景が観察できるでしょう。
月は星空の中を速く移動するため、28日の夜には月が木星から火星へと移動する様子が見られます。夜半過ぎ、月が空に昇った直後には木星と火星との離角がほとんど変わらない位置にありますが、夜明け頃には月が火星に少し近づいて見えるでしょう。このため、時間が経つにつれて、月、木星、火星を結んで形成される三角形の形が変わっていくのを観察できます。
夜遅い時間帯ですが、この素晴らしい光景を観察してみてはいかがでしょうか。スケッチや写真撮影などで記録に残すのも良い思い出になるでしょう。