商業用宇宙インフラ分野をリードする米国のAxiom Space(CEO:Tejpaul Bhatia、以下「アクシオム・スペース」)と、株式会社レゾナック(代表取締役社長 CEO:高橋秀仁、以下「レゾナック」)は、宇宙空間における高機能半導体材料の研究・開発・製造に関する覚書(MOU)を締結しました。本合意により、微小重力環境を活用した次世代半導体関連技術の進化や、宇宙での半導体製造に関する新たな市場創出の可能性が広がります。

概要
本合意のもと、両社は微小重力および低軌道の真空条件下における、半導体および半導体パッケージング向け次世代材料の製造可能性を探ります。微小重力環境では対流や沈殿が発生しないため、欠陥のない半導体バルク結晶(*1)や樹脂、2次元材料(*2)を生成することが可能となります。本プロジェクトでは、国際宇宙ステーション(ISS)やアクシオム・スペースの軌道プラットフォーム、将来的に設計される「アクシオム・ステーション」を活用し、概念実証から商業規模での製造へと段階的に進めていく予定です。

また、レゾナックは本合意の一環として、現在アクシオム・スペースと進めている既存プロジェクト(*3)を拡大する計画です。このプロジェクトでは、宇宙放射線によって半導体デバイスに発生するソフトエラーを低減させる封止材の開発を進めています。ソフトエラーとは、宇宙線がトランジスタ内部に侵入して電子を散乱させ、ビット(*4)が反転することで発生する現象を指します。この課題に対応するため、レゾナックは国際宇宙ステーション内外で封止材の試作品を評価する予定です。
各社のコメント
アクシオム・スペース宇宙飛行士兼CTO 若田光一
レゾナックとの協業は、アクシオム・スペースがいかに世界中の企業と連携し、宇宙を活用して半導体のような重要技術分野でイノベーションを推進しているかを示すものです。
アクシオム・スペース半導体商業化グローバルリーダー Divya Panchanathan
宇宙では、地上では再現できない純粋な条件が整っており、レゾナックの卓越した半導体材料技術とともに、宇宙でのイノベーションを促進し、低軌道での産業化を推進する新技術の実現を目指します。
レゾナックCTO 福島正人
宇宙という極限環境を活用することで、半導体材料は結晶成長などの分野で飛躍的な進化を遂げる可能性があります。アクシオム・スペースとともに実証実験を加速し、新材料創出を通じて産業界の成長と社会の発展に貢献してまいります。

本合意を通じて、アクシオム・スペースとレゾナックは、宇宙を活用した製造の未来を切り開き、地球上およびその先の産業発展に貢献する、低軌道上での生産および最先端半導体技術の基盤構築を目指します。
*1 単結晶構造を持つ大きな塊状の半導体材料
*2 原子層が1層または数層の厚さで構成される極薄の結晶材料で、特有の電子的・光学的・機械的特性を持つ
*3 2025年6月19日「国際宇宙ステーションで、開発中の宇宙向け半導体材料の評価を実施」
*4 情報の最小単位であり、0または1で表される
Resonac(レゾナック)について
レゾナックは、2023年1月に昭和電工と旧日立化成が統合して誕生した機能性化学メーカーです。2024年度の半導体・電子材料の売上高は約4,500億円に達し、特に半導体の「後工程」材料では世界トップクラスの企業です。2社の統合により、材料の機能設計に加え、原料段階からの開発を自社で一貫して行うことが可能となりました。
社名「Resonac」は、英語の“RESONATE(共鳴する・響き渡る)”と“Chemistry”の“C”を組み合わせたものです。今後も共創プラットフォームを生かし、国内外の半導体メーカーや材料・装置メーカーとともに技術革新を推進していきます。
Axiom Space(アクシオム・スペース)について
アクシオム・スペースは、世界初の商業宇宙ステーション「アクシオム・ステーション」を建設中の宇宙企業です。この次世代の軌道プラットフォームは、宇宙での人類の持続的な存在を支える基盤として、微小重力環境での革新的な研究開発を促進し、活気あるグローバル宇宙経済の発展を目指しています。
現在、アクシオム・スペースは国際宇宙ステーションへの商業有人宇宙飛行サービスの主要な提供者であり、月や低軌道で使用される高度な宇宙服の開発も進めています。人類を地球外へ導くというビジョンのもと、すべての人々の利益のために、私たちの文明が地球を超えて進化することを可能にする宇宙インフラの構築を推進しています。