ハッブル宇宙望遠鏡は、天の川銀河の外縁部で長年カタログに載らず“行方不明”だった球状星団を詳細に撮影しました。これらはいて座の球状星団「ESO 591-12」、「パロマー(Palomar)8」とも呼ばれています。星団は淡い恒星ばかりで構成され、背景星と重なり合うため見過ごされてきましたが、ハッブルの高解像度と多波長観測により多くの古い恒星が密集する球状構造が浮かび上がりました。

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“消えた星団”が見つかった理由
本星団は天の川の円盤方向に位置し、前景星と塵が多いため、従来の可視光観測では星団を示す等光度曲線(恒星の密集度)が検出できませんでした。ハッブルの広視野カメラ 3(WFC3)赤外線フィルターで可視光と近赤外を組み合わせたことで、塵の影響を受けにくい恒星が多数抽出され、球状の密度勾配が確認されました。
今回の取り組み
ハッブル宇宙望遠鏡は、天の川銀河の球状星団系全体の個々の星を分離する研究の一環として、ESO 591-12のこの画像を作成するために使用されたデータを取得しました。
地上の望遠鏡ではコンパクトな球状星団内の個々の星を識別できないため、ハッブル宇宙望遠鏡は球状星団の研究に革命をもたらしました。この研究は、ハッブル宇宙望遠鏡がまだ観測していない天の川銀河の34個の確認済み球状星団を対象とするハッブル・ミッシング・グローブラー・クラスター・サーベイ(Hubble Missing Globular Clusters Survey)の一環です。
参考・出典
- NASA Image Article「Hubble Observations Give ‘Missing’ Globular Cluster Time to Shine」(2025-07-18 公開)
- ESA/Hubble Picture of the Week「potw2528a」
原文筆者:Monika Luabeya(NASA)
翻訳:宙クリップ編集部