2013年7月19日、NASAの土星探査機カッシーニは土星本体の影に入り、太陽を背にした珍しい幾何配置を利用して土星と環、7つの衛星、そして遠景の地球を一望するパノラマを撮影しました。強烈な日光が土星に遮られたことで、リング全体が逆光で輝く“後光”となり、淡い外縁部まで詳細が浮かび上がっています。

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なぜ“特別な日”なのか
このモザイクは、外太陽系から地球が撮影された3例目であり、土星軌道からカッシーニが地球を撮ったのは2回目でした。さらに、事前に世界へ告知して「みんなで空を見上げて微笑む」イベントとして行われたのは史上初。地球はE環とG環の間にきらめく小さな光点として写っています。
逆光が教えてくれること
太陽を背にした逆光条件では、リング粒子や希薄なダストが前方散乱で明るくなり、通常の順光では見えにくい構造が強調されます。今回のモザイク(画角約65万km相当)は、環の微細構造やダスト成分を読み解くための貴重なデータとなりました。
次の世代へ受け継がれる設計思想
カッシーニで培われた「巨大惑星系を周回しながら多数回接近観測を重ねる」探査設計は、木星氷衛星探査機Europa Clipper(2024年打上げ、2030年到着予定)のツアー計画にも活かされています。ミッションの経験は、外惑星系探査のスタンダードとなり続けています。
参考・出典
- NASA Image Article「The Day Earth Smiled」(2025年7月21日公開)
https://www.nasa.gov/image-article/the-day-earth-smiled/ - JPL Image Feature「The Day the Earth Smiled」(PIA17172 詳細)
https://www.jpl.nasa.gov/images/pia17172-the-day-the-earth-smiled - 画像出典:NASA/JPL-Caltech/SSI(本文上にクレジット表記)
原文筆者:Monika Luabeya(NASA)
翻訳:宙クリップ編集部