2025年4月23日(水)から、「宇宙研究の最前線」「量子コンピュータ」をテーマにした『未読の宇宙』『量子コンピュータ・ディスコ』の新常設展示がオープンしました。
常設展示のリニューアルは2023年11月から約1年半ぶりです。
今回は新しく常設展示に加わった『未読の宇宙』『量子コンピュータ・ディスコ』について、紹介していきます!
『未読の宇宙』

今回、5階の常設展示ゾーンに新しく加わった『未読の宇宙』
360°周囲を囲んだ大きなスクリーンに、実際の観測・実験データをもとに制作された大迫力の映像を見ることができ、まるで宇宙を浴びるような体験ができる展示です。
巨大な観測・実験装置を駆使して、研究者たちがどのように宇宙を読み解こうとしているのか、設置された実験装置で「ニュートリノ観測」「重力波の観測」「多波長による宇宙観測」「粒子加速器実験」の4つの最新の研究に触れることができます。
プロローグ

まず最初に目に入るのは、あたたかみのある文字で書かれた「未読の宇宙」
題字やイラストレーションについては、イラストレーター・塩川いづみさんの監修です。
正面には、人気展示の「霧箱」がお迎え。宇宙から届く宇宙線の軌跡を観察することができます。本展にあわせて最新型にアップデートされ、観察しやすいよう窓のサイズが約4倍となりました。
壁面には天体・宇宙を語る詩やイラストが並び、物語を読み進めるように小路が続いています。“「わたし」という個の視点から宇宙や科学への想像を広げていく”というコンセプトで作られた空間で、宮沢賢治の「春と修羅・序」の一節をはじめに、情緒的に宇宙の世界へ来館者をいざないます。
小路を進んでいくと、動きにあわせて自分の位置を読み取り、周囲の情報を読み上げてくれる仕組みになっています。朗読は、俳優・池松壮亮さん、モデル・歌手の甲田益也子さんが担当され、優しい声に導かれて宇宙の世界へ入り込んでいきます。

メインエリア

まず驚くのは、周囲をぐるっと取り囲むような360゜の大迫力スクリーン!
スクリーンには実際の観測・実験データをもとに、作品化された映像が映し出されます。
ニュートリノや重力波、可視光以外にもさまざまな波長の光は、宇宙からの情報をわたしたちに届けてくれる「メッセンジャー」です。こうした宇宙から届くメッセージをみつけ、複数のデータを組み合わせて宇宙を理解する手法を「マルチメッセンジャー天文学」といいます。
こういった「マルチメッセンジャー天文学」で、研究者が観測で得た”生のデータ”を使い、ノイズも含まれる膨大なデータから、研究者がどのように宇宙からのメッセージをみつけ、宇宙を読み解いているのか?マルチメッセンジャー・ビジョンを通して、最先端の研究を追体験することができます。
宇宙から届く「メッセージ」
映像の中では、宇宙から届いた「音」を聞くこともできます。研究データからこんなメッセージを読み解いているなんて、大興奮!遠い宇宙から届くメッセージにロマンを感じます。
まるで夜空を見上げるように、スクリーンを見上げ、直感的に宇宙を感じることができます。




4つの体験装置
展示エリアには、4つの観測・実験装置が並び「ニュートリノ観測」「重力波の観測」「多波長による宇宙観測」「粒子加速器実験」の観測・実験について体験することができます。
装置にはスマートフォンの形をした機器があり、展示の監修を務める第一線の研究者の方がビデオ通話風の映像で登場します。映像と連動しながら展示を操作することで、研究者の方と一緒に宇宙の観測・実験を行っているかのような体験を楽しむことができます。

梶田先生から着信が!ドキドキ

ビデオ映像からの指示にあわせて、レーザー干渉計を操作!光のしま模様を観察することができました!楽しい!
スマートフォンのビデオ通話風な演出と、実際に体験装置を操作することで宇宙の観測・実験を体験することができ、まるで自分も天文学者になった気分!研究者の方と一緒に、宇宙の謎を解き明かしているような没入感があります。
AIと語る宇宙

さらに、展示を通して浮かんだ「なぜ?」や「気付き」を、生成AIと自由に語り合うことのできる対話型展示もあります。
ここでは、バラエティに富んだ7つのキャラクターが登場し、ランダムに選ばれた3人のAIキャラクターと会話を楽しむことができます。

みんな知りたい宇宙の謎、早速質問してみました!
知識豊富な「科学者」、無邪気なリアクションの「子ども」などが答えてくれています。
宇宙の果て、考えるだけでわくわくするよね。
未読の宇宙への想い

今回展示の企画をつとめられた日本科学未来館科学コミュニケーション室の科学コミュニケーター坂口香穂さんは「未読の宇宙は、これまでの日本科学未来館らしさとは異なった展示で、”エモさ”を意識している。数学がわからなくても、ロマンは感じることができる。感覚的に宇宙に没入してほしい」と語りました。
また、展示企画をつとめられたディレクターの櫛田康晴さんは「研究現場というリアルと、データを科学的に見やすくする感覚的なアートの2つを繋ぐ中間にある展示。各観測装置のデータが組み合わさる、”連携する知”によって、宇宙の新しいことがわかっていく。体験装置を通じて、一緒に観測している気持ちになってもらえたら」とお話されました。

総合監修をつとめられた、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章さんは「ニュートリノや重力波などのマルチメッセンジャー天文学は謎解きのようなもの。この展示をキッカケに、少しでも身近に気楽に、宇宙を浴びにきてもらえたら嬉しい」と展示への想いを語りました。
『量子コンピュータ・ディスコ』
同じく新常設展示として、3階に登場したのが『量子コンピュータ・ディスコ』

こちらは、音楽を選びフロアに流すDJ操作を通して、量子プログラミングを体感し、直感的に楽しみながら量子コンピュータを理解していく展示です。
一度は聞いたことのあるおなじみの名曲を多数使用しており、ダンスフロアは最高潮。自分の好きな曲を流すため、量子力学の特性をいかしたプログラミングを体験し、「重ね合わせ」や「位相」「もつれ」「測定」といった量子の性質を用いた計算方法で、手探りで正解に近づいていきます。

実際にフロアに曲が流れた時は達成感!
『ジオ・スコープ』
さらに今回の2つの新規常設展示とあわせて、『ジオ・スコープ』も展示デザインを一新しリニューアル・一般公開しました。

今回のリニューアルで、「世界の電力消費量」や大気中の「エアロゾルの濃度」など新たに8つの最新データを新規収録。これまでのジオ・スコープのデータをあわせ、計20個の地球に関するデータを見ることができます。体験画面も直感的な操作性を高めるデザインとなり、地球と私たちのつながりをさらに感じられる展示になりました。

さらに、5台設置される端末のうち1台は科学データを音でも表現した「耳で楽しむモード」を搭載。音の大きさや頻度など、あらかじめ設定されたルールにもとづいてデータが音で表現されるので、視覚に障害のある方でも耳から理解し楽しむことができます。
展示企画をされた科学コミュニケーション室の岩澤大地さんは「音で科学データを理解することで、画面では平坦に感じるデータを、耳で立体に感じ、気づきが生まれる。データをとらえる新たな方法。耳でも楽しむジオ・スコープを体験してもらえたら。」と話しました。
最後に
研究開発の最前線を体感できる新しい常設展示『未読の宇宙』と『量子コンピュータ・ディスコ』、そしてリニューアルした『ジオ・スコープ』はいかがだったでしょうか?

浅川智恵子 館長は「最先端の科学を子どもも大人も身近に感じていただける展示を目指しました。展示体験が現在進行形ですすむ研究開発に興味をもつきっかけとなることを願っています」と述べられました。
夏休みなどの長期休暇シーズンはもちろん、これからの季節の雨の日のおでかけ場所にも。1日楽しめる、科学体験展示が盛りだくさんです!

ぜひ日本科学未来館で、壮大な研究開発の最前線を楽しみ、体感してください!