一気に気温が下がり、冬の足音も聞こえ始めた11月。
11月は、月に関係する現象が2つ起こります。まずは8日の昼間に、月が金星を隠す金星食が一部の地域を除いて起こります。白昼のため、現象自体の観察には双眼鏡か望遠鏡が必要ですが、夕方には現象直後の月と金星が寄り添って見えることでしょう。また19日には全国で部分月食が起こります。 夕方の空では、西から南にかけて金星、土星、木星といった惑星が明るく輝いています。また土星よりも遠い惑星、天王星が5日に衝となり、見ごろを迎えます。
長く外にいると寒くなってくる季節、温かい服装で夜空を見上げてみましょう。
暗くて見づらい惑星も、目を凝らしてみると澄んだ空気の中で見えるかもしれません。
5日 | 新月/天王星が衝 |
7日 | 立冬(太陽黄経225度) |
8日 | 金星食(昼間に起こる。九州の一部の地域では見られない) |
11日 | 上弦 |
12日 | このころ、おうし座北流星群が極大(見頃は11月上旬から中旬で、ほぼ一晩中見える。1時間に2個程度) |
18日 | 2時頃、しし座流星群が極大(見頃は18日未明。1時間に3個程度。月の条件は悪い) |
19日 | 満月/部分月食 |
22日 | 小雪(太陽黄経240度) |
27日 | 下弦 |
29日 | 水星が外合 |
惑星の見どころ
水星
日の出前の東の低空に位置し、徐々に高度を下げていきます。29日に外合となり、以後は日の入り後の西の低空に位置するようになります。見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。
金星
日の入り後の南西の低空で明るく輝いています。明るさはマイナス4.4等からマイナス4.7等。
火星
見かけの位置が太陽に近く、観察には適していません。
木星
やぎ座を東に移動しています(順行)。日の入りから1時間ほど経った頃には南の空に見えています。明るさはマイナス2.5等からマイナス2.3等。
土星
やぎ座を東に移動しています(順行)。日の入りから1時間ほど経った頃には南から南西の空に見え、明るさは0.6等から0.7等。
※国立天文台Webサイトより引用
11月の注目その1 昼間の金星食!
11月は金星食があります。昼間の為、見ることは難しいですが、金星食が終わった後なら月と金星が大接近している姿を見ることができます。
夕方、日の入りからしばらく時間が経つと、南西の低い空に金星が輝き始めます。10月30日に東方最大離角となった金星は、夕方の南西の空で見ごろとなり、11月8日夕方は、その金星に月が接近して見られます。この日の昼間には、金星が月に隠される金星食が起こります(金星食については後述)。食が終わって月の後ろから出てきたばかりの金星が、夕方の空で月と並んで見られるのです。月は比較的明るいため、日の入りの頃にはすでに見えていることでしょう。そのすぐ右下側に注目すると、空が暗くなるにつれて金星が見えてきます。
月と金星との距離は、時間とともに少しずつ離れていきます。地平線に沈むまでの短い時間ですが、じっくりと観察するとその様子もわかることでしょう。印象的な光景となりそうですので、11月8日の夕空を眺めてみてくださいね。
金星食とは?
金星食とは、月が手前を通ることで金星を隠す現象です。月と金星は約1カ月ごとに繰り返し近づいて見られますが、地上から見る月の通り道と金星の通り道がずれているため、金星食はなかなか起こりません。起こる場合も、観察できる地域が限られますので珍しい現象と言えます。今回の金星食は、九州の一部や沖縄、小笠原諸島などを除いた地域で起こりますので、見える地域の方はぜひ空を金星食を観察してみてくださいね。
東京では、13時46分41秒に月が金星を隠し始めます(潜入開始)。この時の金星は、月の輝いていない部分に隠されます。13時48分48秒には、金星は全て隠されてしまいますが、金星も欠けているため、これより少し前には金星が見えなくなるでしょう。
隠された金星は、14時37分50秒に月の明るい側から出現し始めます。月から金星全体が完全に出現するのは14時40分00秒ですが、やはり金星が欠けているため、これよりも若干早く月から金星が離れて見えるでしょう。各現象の時刻は、見る場所によって異なります。おもな都市の時刻を以下の表のとおりでです。
今回の金星食は昼間の現象で、肉眼で見るのは難しいですが、双眼鏡や望遠鏡を用いた適切な観察方法では、見ることが可能です。今回の金星食が起こる空は、太陽からは比較的遠い位置ですが、昼間の空には太陽が強烈な光を放って輝いています。操作を誤るなどしてうっかり太陽を見てしまうと、目を損傷し、失明に至るなどの重大な事故につながる可能性がありますので、観察する場合には十分に注意を払うようにしましょう。
11月の注目その2 部分月食
11月19日の夕方から宵にかけて、全国で部分月食が見られます。
月食は、月が地球の影に入ることによって起こります。地球の影(本影)によって全て隠される「皆既月食」と、一部が隠される「部分月食」があります。今回は部分月食ですが、月の大部分が影の中に入り込みます。
部分月食の始まりは、16時18.4分です。ただし、北海道や東北地方北部を除く地域では、月食の始まりは月が地平線の下にあって見られず、月が欠けた状態で空に昇ってくる月出帯食(げつしゅつたいしょく)となります。今回の月食は、とくに前半で月の高度が低いので、東の空が開けた場所で観察しましょう。
月が最も欠けて見える、食の最大は18時02.9分です。皆既月食の場合には、完全に影の中に入った月が赤黒い色(赤銅色とも呼ばれる)になって見えることが多いのですが、一方で、多くの部分月食では影の部分の色は暗いだけではっきりしません。ただ今回の部分月食では月の大部分が影に入りますので、食の最大の頃には影の部分が色づいてかもしれません。
月はその後、空を昇りながら地球の影から出ていきます。19時47.4分には月が影から離れ、部分月食が終わります。
〜主な都市における予報〜
地名 | 月の出 | 部分月食の始まり | 食の最大 | 部分月食の終わり | |||
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時刻 | 時刻 | 月の高度 | 時刻 | 月の高度 | 時刻 | 月の高度 | |
那覇 | 17時35.6分 | 月は地平線の下 | 18時02.9分 (食分0.978) | 5.0度 | 19時47.4分 | 27.1度 | |
福岡 | 17時10.2分 | 9.4度 | 30.3度 | ||||
京都 | 16時45.3分 | 14.0度 | 34.8度 | ||||
東京 | 16時27.6分 | 17.3度 | 38.1度 | ||||
仙台 | 16時17.1分 | 16時18.4分 | 0.0度 | 18.7度 | 38.8度 | ||
札幌 | 16時03.0分 | 2.0度 | 19.7度 | 38.5度 |
月が地球の影の中に入り込む程度(影で覆われる月の直径の度合い)を「食分」という数値で表します。その値が大きいほど影の中に月が深く入り込み、1.0以上で皆既月食となります。今回の月食の最大食分は0.978で、これは月の直径の97.8パーセントまで影に入り込むことを意味し、部分月食としてはたいへん大きな値です。食分の値が大きいことをしばしば「深い」と表現し、今回のような月食は「たいへん深い部分月食」と言います。