肌寒い日が増えて、秋から冬への移り変わりを感じる11月。
宵空には、夏から秋の序盤にかけて見頃を迎えた土星と木星が、引き続き目立っています。夜が更けてくると南西に傾く二つの惑星に代わって火星が頭上高くまで昇り、12月の最接近を控えてぐんぐん明るさを増していく赤い輝きが際立ちます。
11月に最も注目したい現象は、8日に起こる皆既月食です。日本全国で欠け始めから欠け終わりまでを見ることができます。今回の月食はお天気も良い予定なので、ぜひ夜空を見上げて赤銅色の月を楽しんでくださいね。
月食の最中には天王星食も起こります。皆既食で赤銅(しゃくどう)色になった月の向こうに天王星が隠れる様子の観察にも挑戦してみてください。
1日 | 上弦 |
7日 | 立冬(太陽黄経225度) |
8日 | 満月/皆既月食(日本全国で見られる)/天王星食(小笠原諸島を除く日本全国で観察できる) |
9日 | 水星が外合/天王星が衝 |
13日 | このころ、おうし座北流星群が極大(見頃は11月上旬から中旬で、ほぼ一晩中見える。1時間に2個程度) |
16日 | 下弦 |
18日 | 8時頃、しし座流星群が極大(見頃は18日未明。1時間に3個程度。月の条件はやや悪い) |
22日 | 小雪(太陽黄経240度) |
24日 | 新月/木星が留 |
30日 | 上弦 |
惑星の見どころ
水星
上旬は、日の出前の東の低空に位置しています。9日に外合となり、以後は日の入り後の南西の低空に位置するようになります。
金星
日の入り直後の南西の低空に位置していますが、見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。
火星
おうし座を西に移動しています(逆行)。真夜中の東から南の高い空に見え、明るさは、マイナス1.2等からマイナス1.9等。
木星
うお座を西に移動していますが(逆行)、24日に留(りゅう)となり、以降は東向きの動き(順行)に転じます。留のころには、星空の中での木星の動きが止まったように見えます。明るさはマイナス2.8等からマイナス2.6等。
土星
やぎ座を東に移動しています(順行)。宵の南の空に見え、明るさは0.7等から0.8等。
※国立天文台Webサイトより引用
月が土星と木星に接近!
11月の宵、20時頃の南の空には土星と木星が輝いています。土星は0.7等前後の比較的穏やかな輝きで南西の空に傾きかけ、夜半には沈んでいきます。南中を迎えようとする木星はマイナス2.8等前後という一段と鋭い光で、明るい星の少ない秋の星座の中で飛びぬけて目を引いています。
11月の初旬には、離れて並ぶ2つの惑星の近くを月が通り過ぎていきます。1日に上弦の月が土星に近づき、一日ごとに満ちながら東へと移動して、5日には木星の東まで通り抜けます。
宵の空で一際目立つ二大惑星と月が秋の夜空を華やかにしてくれています。
皆既月食・天王星食
11月8日の夜、日本全国で条件良く見られる皆既月食が起こります。
南西諸島では部分食の始まり時点での月の高度がまだ低いですが、多くの地域で月の高度がある程度高くなる時間帯に皆既食となり、観察しやすいでしょう。
各地での予報は下の表のとおりです。月は、18時9分から欠け始め、19時16分に皆既食となります。皆既となった月は「赤銅色(しゃくどういろ)」と呼ばれる、赤黒い色に見えます。皆既食は86分間続いて20時42分に終わり、その後は徐々に月は地球の影から抜けて、21時49分に部分食が終わります。この進行は、どこで見ても同じです。
今回の皆既月食はお天気にも恵まれる予定で、長い時間観察できますので、ぜひ夜空を見上げてみてください。
月の出 | 部分食の始まり 18時9分 | 皆既食の始まり 19時16分 | 食の最大 19時59分 | 皆既食の終わり 20時42分 | 部分食の終わり 21時49分 | |
---|---|---|---|---|---|---|
札幌 | 16時10分 | 20.2度 | 32.3度 | 39.9度 | 47.1度 | 57.1度 |
仙台 | 16時22分 | 19.5度 | 32.5度 | 40.7度 | 48.7度 | 60.1度 |
東京 | 16時32分 | 18.3度 | 31.7度 | 40.2度 | 48.6度 | 61.0度 |
京都 | 16時49分 | 15.0度 | 28.4度 | 37.1度 | 45.6度 | 58.5度 |
福岡 | 17時14分 | 10.4度 | 23.9度 | 32.7度 | 41.5度 | 54.9度 |
那覇 | 17時37分 | 6.3度 | 20.7度 | 30.1度 | 39.5度 | 54.3度 |
月食の最中に、小笠原諸島を除く日本のほとんどの場所で月が天王星を隠す「天王星食」も起こります。
天王星は約6等級で、薄い青色に見えます。非常に条件の良い空でも肉眼で見える限界の明るさなので、双眼鏡や望遠鏡などを使って探してみるといいですね。普段の満月のすぐ近くであれば、圧倒的な明るさに負けてしまいますが、多くの地域では天王星の潜入時に月が皆既食中で暗いため、見つけやすいのではないでしょうか。
条件の良い皆既月食となかなか見られない天王星食なので、寒さ対策の上、このチャンスにぜひ観察してみてください!
月が火星に接近!
夜半前の東の空で、群を抜いた明るさと赤い色で輝いているのは、12月に地球に最接近する火星です。昇ってくる冬の星座の明るい恒星の中にあっても、飛び抜けて赤く鮮やかな輝きを放っています。おうし座のアルデバラン、オリオン座のベテルギウスと火星、三角形を形づくって見える、色合いの似た恒星と惑星の共演も楽しみましょう。まるで秋の夜空の紅葉のようですよ。
11日には、月が火星の近くを通ります。最も接近するのは夜半前で、およそ2度の離角(月の視直径の4倍程度)まで近づきます。満月を過ぎた月はまだ明るく、周囲の星をかすませますが、マイナス1.5等に達する火星はその明るさにも負けず、月と並んで見えるでしょう。
月が土星、木星に接近!
薄明が終わる頃、南の空やや低いところに、みなみのうお座のフォーマルハウトが南中しています。
秋の夜空で唯一の1等星として、孤独な印象から「南のひとつ星」とも呼ばれてきた星です。でも今年は、南東寄りの高いところに木星、そして南西寄りには土星があり、二つの明るい惑星と共に輝いています。その近くを、11月の終わりから12月の初めにかけて月が通り過ぎます。
29日には、0.8等で輝く土星の南側(見た目では左下側)を月が通っていきます。上弦の前日で半分よりやや欠けた月と土星は、22時頃に並んで沈んでいきます。
さらに東へと移動していく月は、12月の初めにかけて、マイナス2.6等の木星へと近づいていきます。
11月は大注目の皆既月食もありますし、火星を筆頭に夜空の紅葉、惑星たちも夜空を彩っています。
夜は冷えますので、暖かい格好でぜひ秋の夜空を観察してみてくださいね。