10月になると、夏と比べて日の入りの時刻がぐっと早くなったと感じられるようになります。月の前半では、夏の星座が宵の空に目立ちますが、月末になるとそれらは西の空に傾き、秋の星座が見やすくなります。日の入り後の西の低空には金星が輝き、南東の空には土星が見えます。そして、土星が南中する頃には、木星が東の低空に現れます。月は6日に金星、14日に土星、21日に木星の近くに見え、17日の満月は2024年で最も地球に接近する満月となります。星空を移動していく月と惑星の共演を楽しんでみましょう。
1日 | 水星が外合 |
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3日 | 新月 / 金環日食(日本では見られない) |
8日 | 寒露(太陽黄経195度) |
9日 | 木星が留 |
11日 | 上弦 |
17日 | 満月(2024年で地球に最も近い満月) |
20日 | 土用の入り(太陽黄経207度) |
21日 | このころ、オリオン座流星群が極大(見頃は極大を中心とした前後数日間の夜半から未明。1時間に5個程度。月の条件は悪い) |
23日 | 霜降(太陽黄経210度) |
24日 | 下弦 |
惑星の見どころ
水星
1日に外合となり、以後は日の入り後の西から南西の低空に位置するようになります。見かけの位置が太陽に近く、観察は難しいでしょう。
金星
日の入り後の南西の低空に見えます。明るさはマイナス3.9等からマイナス4.0等。
火星
ふたご座を東に移動し、月末にはかに座に移ります(順行)。夜半前に東の空に昇り、日の出前には南東の空の高いところに見えます。明るさは0.4等から0.1等。
木星
月初はおうし座を東に移動していますが(順行)、9日に留(りゅう)となり、以降は西向きの動き(逆行)に転じます。留のころには、星空の中での木星の動きが止まったように見えます。真夜中の東の空に見え、明るさはマイナス2.5等からマイナス2.7等。
土星
みずがめ座を西に移動しています(逆行)。宵の南の空に見え、明るさは0.7等から0.8等。
※国立天文台Webサイトより引用
月が金星に接近
月と金星のランデブーに注目!
宵の明星である金星が、日の入り後の空でその存在感を増してきました。
10月上旬には、金星が日の入り後の西南西の低い空で明るく輝いています。日の入りから約30分後の金星の高さは約10度と低めですが、マイナス4等級の明るさで輝く金星は、低い位置でも目に入りやすいでしょう。6日には、金星の左側に細い月が見られます。
金星は2025年1月10日に東方最大離角を迎えるため、今後は少しずつ高度を上げながら、宵の明星としてさらに目立つ存在になっていきます。日の入り後の西の空に見える金星には、おおよそ月に1回のペースで細い月が近づくので、今後5カ月ほど、宵の空で月と金星の共演を楽しむことができるでしょう。
月が土星に接近
宵の南東の空に注目!
9月8日に衝を迎えた土星が、夕方の空で観察しやすくなっています。10月14日には、土星の近くに月が見られます。
上弦と満月の中間くらいの月は非常に明るく、その光で周囲の星々が見えにくくなりますが、0等級の明るさを持つ土星は、その月明かりの中でも見つけやすいでしょう。
2024年で地球にいちばん近い満月
地球と月との距離は変化する
2024年10月17日の満月は、今年最も地球に近い位置で起こります。
月が地球を回る軌道は楕円形であるため、地球と月の距離は常に一定ではありません。また、月の軌道は太陽や地球の重力の影響を受けて変動しています。このため、地球と月の地心距離は変化し、満月や新月の時の距離も毎回異なります。
今回は、10月17日の9時51分に月が近地点を通過し、その約10時間半後の20時26分に満月(望)になります。満月時の地心距離は約35万7400キロメートルで、月の視直径は約33分26秒角です。ちなみに、9月18日の満月も地球に近く、地心距離は約35万7500キロメートル、視直径は約33分25秒角と、10月17日の満月とほとんど差はありません。
2024年で地球から最も遠かった満月は2月24日でした。今回の満月は、2月24日の満月と比べて視直径が約14%大きく見えます。しかし、夜空で直接二つの月を並べて比較することはできないため、実際に見ただけでその視直径の違いに気づくのは難しいでしょう。視直径の差は、視直径を基にしたイラストを並べたり、同じ条件で撮影した満月の写真を並べて比較することで、よりはっきりとわかります。
近年では、地球に近い満月を「スーパームーン」と呼ぶことが増えています。スーパームーンには厳密な定義はないものの、ニュースなどをきっかけに月や夜空を見上げた方も多いでしょう。「なぜ月が大きく見えるのだろう?」と疑問に思った方もいるかもしれません。このような興味から、宇宙についてさらに関心を持っていただけると嬉しいです。
月が木星、火星に接近
月、惑星、冬の1等星たちの共演を見よう
10月下旬になると、日の入りから約3時間後に木星が東の空に昇ります。10月20日から21日にかけては、木星の近くに月が見られます。月も木星も非常に明るいため、東の低い空にあっても目に留まりますが、真夜中には冬の星座の1等星が描く「冬のダイヤモンド」が木星を囲むように昇り、とても豪華な景色が広がります。明るい星々は、月明かりの中でもその輝きを失わず、美しい夜空を演出してくれます。
21日に木星の近くに見えた月は、日が経つごとに東へ移動し、23日には火星の近くに見えるようになります。夜更かしや早朝の起床ができるなら、ぜひ深夜や夜明け前の時間帯に観察してみてください。
紫金山・アトラス彗星の観察チャンス
紫金山・アトラス彗星が見ごろを迎える
2023年1月に発見されたTsuchinshan-ATLAS彗星(C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS))、本記事では「紫金山・アトラス彗星」と呼びますが、2024年10月に観測の好機を迎えます。この彗星は発見当初、非常に明るくなると期待されていましたが、その後の状況変化により、予想されたほどの明るさには達しない見込みです。それでも、暗い空の下では、肉眼でかすかにその姿を確認できるかもしれません。ここでは、彗星の位置や予想される明るさについてご紹介します。
紫金山・アトラス彗星の概況
紫金山・アトラス彗星は2023年1月に発見された彗星で、2024年9月27日(世界時、日本時では28日)に近日点を通過しました。これは彗星が太陽に最も接近するタイミングで、この時の太陽との距離は0.39天文単位(約5900万キロメートル)でした。この前後で彗星の活動が最も活発になったと考えられます。しかし、この時期の彗星は太陽に非常に近い位置にあり、肉眼での観察は難しかったです(※日によっては、明け方の低空で双眼鏡を使った観察や写真撮影が行われました)。
彗星が地球に最も接近したのは10月12日(世界時、日本時では13日)で、この時の地球との距離は0.47天文単位(約7100万キロメートル)です。この時期から、彗星の位置が太陽から離れ、夕方の西の低い空で見えるようになります。空が暗い場所であれば、肉眼でかすかに観察できる可能性がありますが、市街地では難しいでしょう。ただし、適切な設定のカメラを使えば、彗星のぼんやりとした姿を捉えることができるかもしれません。10月下旬以降、彗星は太陽と地球からさらに遠ざかり、徐々に暗くなっていきます。
紫金山・アトラス彗星の見える位置と明るさ
紫金山・アトラス彗星は、星空を日々移動しているため、観察する日の位置が変化します。また、彗星の明るさも日に日に変わります。
10月12日から10月15日頃(夕方の非常に低い空)
10月中旬になると、彗星は太陽から少しずつ離れていき、夕方の極めて低い位置ではありますが、観察可能になります。10月12日の日の入り1時間後の地平高度はわずか1度(東京基準、西)ですが、日が進むにつれて少しずつ高くなり、10月15日には14度(西)まで上がります。それでも、この時期の観察はかなり難しいと考えられます。
彗星の明るさは、1.5等から3等と予想されています(予想等級、以下同じ)。6等より明るければ、暗い空であれば肉眼でも見える明るさですが、彗星が見える西の低い空は、まだ薄明が残っていることが多く、地上の光や霞の影響を受けるため、肉眼での観察は簡単ではありません。望遠鏡や双眼鏡を使うことで観察しやすくなりますが、それでも困難かもしれません。明るい金星を目印に、少し早い時間から探してみると良いでしょう。
また、カメラを適切に設定すれば彗星を撮影できる可能性がありますが、試行錯誤しながら設定を見つける必要があるでしょう。
日付 | 時刻 | 方位と地平高度 | 明るさ |
---|---|---|---|
10月12日 | 18時09分 | 西1度 | 1.5~2.5等 |
10月13日 | 18時08分 | 西5度 | 1.5~3等 |
10月14日 | 18時06分 | 西10度 | 1.5~3等 |
10月15日 | 18時05分 | 西14度 | 1.5~3等 |
※明るさは予想等級です。彗星の状況により、これより明るくなる場合や暗くなる場合があります。
10月16日から10月20日頃(夕方の低空)
10月16日頃からは、彗星の高度が少し上がり、観察しやすい時期を迎えます。明るさも比較的良好で、観測に適したタイミングと考えられます。日の入り1時間後の高度は、10月16日には17度(西南西)で、10月20日には28度(西南西)まで上昇します。
彗星の明るさはやや落ち着き、2等から4等程度と予想されています。暗い場所であれば、ぼんやりとした姿を肉眼で確認できる可能性がありますが、双眼鏡や望遠鏡を使えば、さらに観察がしやすくなるでしょう。
また、カメラを適切に設定すれば、彗星を撮影できるかもしれません。彗星の尾が広がることも期待できるため、撮影の際には構図を工夫してチャレンジしてみてください。
日付 | 時刻 | 方位と地平高度 | 明るさ |
---|---|---|---|
10月16日 | 18時04分 | 西南西17度 | 2~3.5等 |
10月17日 | 18時03分 | 西南西21度 | 2~3.5等 |
10月18日 | 18時01分 | 西南西24度 | 2~3.5等 |
10月19日 | 18時00分 | 西南西26度 | 2.5~4等 |
10月20日 | 17時59分 | 西南西28度 | 2.5~4等 |
※明るさは予想等級です。彗星の状況により、これより明るくなる場合や暗くなる場合があります。
10月21日から10月31日頃(夕方の空)
この時期の彗星は、夕方の空でやや高度が上がり、低空のもやなどの影響を受けにくくなります。しかし、彗星が太陽や地球から徐々に遠ざかるため、明るさは約3等から6等程度に暗くなり、暗い空であっても肉眼での観察が次第に難しくなっていくでしょう。それでも、双眼鏡や望遠鏡を使用すれば観察を続けられる可能性があります。
また、適切な設定をしたカメラで彗星を撮影することは可能と考えられますが、彗星が暗くなるにつれ撮影は難しくなり、さらに距離が離れることで彗星の姿が徐々に小さく写るようになるでしょう。
日付 | 時刻 | 方位と地平高度 | 明るさ |
---|---|---|---|
10月21日 | 17時58分 | 西南西30度 | 2.5~4.5等 |
10月24日 | 17時54分 | 西南西35度 | 3~5等 |
10月27日 | 17時51分 | 西南西38度 | 3.5~5.5等 |
10月30日 | 17時47分 | 西南西39度 | 4~6等 |
※明るさは予想等級です。彗星の状況により、これより明るくなる場合や暗くなる場合があります。
紫金山・アトラス彗星の基本情報
紫金山・アトラス彗星は、2023年1月に発見された彗星です。最初に1月9日に中国の紫金山天文台で発見されましたが、確認観測が行われなかったため、一度はその報告が削除されてしまいました。その後、ATLAS(Asteroid Terrestrial-Impact Last Alert System の略称で、地球に衝突するような小惑星を早期に発見し警報するシステム)が2023年2月22日に発見した小惑星状の天体が、実は彗星の形状をしていることが判明し、さらに紫金山天文台で見つかった天体と同じものであることが分かりました。このため、天体にはC/2023 A3の符号が与えられ、「Tsuchinshan-ATLAS(紫金山・アトラス)彗星」と命名されました。
発見から2024年4月頃までの観測では、最も明るくなったときにはマイナス等級の大彗星になることが期待されていました。しかし、2024年5月から7月にかけて増光がほとんど見られず、この間は彗星活動が停滞していたと考えられます。現在では活動が再び活発になり、太陽に接近するにつれて明るさを増している様子が確認されています(2024年9月下旬時点)。
彗星は、放物線に近い軌道を通っているとされ、オールトの雲(太陽系の外側・太陽から数万天文単位付近をぐるりと大きく球殻状に取り囲む氷微惑星の集まりで、紫金山・アトラス彗星のような長周期彗星は、ここからやってくると考えられています)からやってきたと考えられています。今回の太陽接近によって惑星の引力の影響を受け、軌道がわずかに変化して双曲線軌道になりました。そのため、彗星は将来的に太陽系を離れ、二度と戻ってこないと推測されています。