12月になると、日の入り後の南西の空にまず宵の明星・金星が輝き、その後、土星や木星も姿を見せ始めます。さらに夜が深まると、赤く輝く火星も東の空に昇り、目を引きます。これらの明るい惑星たちに加え、明るい恒星が多い冬の星座が見頃を迎え、夜空は一層にぎやかになります。
14日にはふたご座流星群が極大を迎えますが、翌日に満月を控え、ほぼ一晩中明るい月が輝くため、観測条件はあまり良くありません。それでも、月明かりに負けないほど明るい流星に期待してみましょう。
2024年12月は天文現象も豊富です。8日の土星食や25日のスピカ食といった、月が天体を隠す珍しい現象が続きます。また、21日には冬至を迎え、夜の時間が最も長くなる季節です。この機会に、星空とともに天体の運行にも目を向けて楽しんでみてはいかがでしょうか。
1日 | 新月 |
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6日 | 水星が内合 |
7日 | 大雪(太陽黄経255度) |
8日 | 土星食(関東地方全域と北海道から九州地方にかけての一部地域で見られる) 参照:惑星食各地予報 / 木星が衝 / 火星が留 / 海王星が留 |
9日 | 上弦 |
14日 | ふたご座流星群が極大(見頃は13日深夜から14日未明。1時間に30~40個程度。月の条件は悪い)/ すばる食(北海道の一部と東北地方より南の地域で見られる) |
15日 | 満月 |
16日 | 水星が留 |
21日 | 冬至(太陽黄経270度) |
23日 | 下弦 |
25日 | スピカ食(北海道の一部と東北地方より南の地域で見られる) / 水星が西方最大離角 |
31日 | 新月 |
惑星の見どころ
水星
月初めは日の入り後の南西の低空に位置しますが、6日に内合を迎え、それ以降は日の出前の南東の低空に移動します。中旬以降になると徐々に高度が上がり、25日に西方最大離角となります。東京では、12月16日から2025年1月2日まで、日の出30分前の高度が10度を超えるため観察しやすくなります。この期間の明るさは0.3等からマイナス0.4等です。
金星
日の入り後の南西の空に輝いています。月末に向けて高度が上昇し、明るさも増していきます。明るさはマイナス4.2等からマイナス4.4等です。
火星
月初めはかに座を東に移動しています(順行)が、8日に「留」を迎え、その後は西向きの動き(逆行)に転じます。留の時期には、火星が星空の中で静止しているように見えます。真夜中頃には東から南東の高い空に位置し、明るさはマイナス0.5等からマイナス1.2等へと増していきます。
木星
おうし座を西へ移動中(逆行)で、8日に「衝」を迎え、観察の好機となります。真夜中には南から西の高い空で輝き、明るさはマイナス2.8等からマイナス2.7等です。
土星
みずがめ座を東へ移動中(順行)で、宵の南西から西の空に見られます。明るさは0.9等から1.1等です。
※国立天文台Webサイトより引用
月が金星に接近
日の入り後の西の空に注目!
12月の南西の空には、日の入り後、宵の明星・金星が非常に明るく輝いています。4日には、金星の右下に細い月が見え、5日にはその月が金星にさらに接近します。夕焼けに染まる空で、マイナス4.2等の金星が鋭い輝きを放ち、細い月と並ぶ光景は非常に美しいものとなるでしょう。
土星食
今回は見やすい夕方の土星食
12月上旬、太陽が沈んで暗くなり始めた空では、土星が南中しています。そして8日には、上弦前の月が土星を隠す「土星食」が発生します。2024年には、7月25日の日の出後にも土星食が日本で見られますが、明るい青空での観察は難しいでしょう。一方、今回の12月8日の土星食は、日の入り後の暗くなる時間帯に起こるため、明るく輝く土星が月に隠れる様子を日本の広い範囲で観察することができます。
土星食の見える地域
12月8日の土星食が観察できるのは、日本列島の南東側の地域です。一方で、北海道の一部太平洋岸や東北地方北部の一部、岡山県以西の中国地方の大部分、宮崎県・鹿児島県の南東部を除く九州地方では土星食は発生せず、月と土星が非常に接近して見えるだけになります。
地点 | 潜入 | 出現 | ||||
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開始時刻※ | 終了時刻※ | 土星の 高度 | 開始時刻※ | 終了時刻※ | 土星の 高度 | |
仙台 | 18時27.5分 | 18時29.1分 | 41.1度 | 18時58.4分 | 19時00.0分 | 38.4度 |
東京 | 18時19.2分 | 18時20.5分 | 44.4度 | 19時00.7分 | 19時02.0分 | 41.1度 |
京都 | 18時21.7分 | 18時24.0分 | 45.6度 | 18時45.3分 | 18時47.5分 | 44.4度 |
那覇 | 17時54.1分 | 17時56.0分 | 54.8度 | 18時27.2分 | 18時29.1分 | 55.2度 |
土星食が観察できる地域とそうでない地域の境界付近では、土星が月の縁に触れるように見える「接食」が起こります。この際、月の縁のクレーターによる凹凸の影響で、土星が隠れたり現れたりと、瞬くような動きが見られる可能性があります。
土星食の見え方
今回の土星食では、月はほぼ半月の状態です。土星は、月の明暗を分ける境界線付近の暗い側(暗縁)から月に隠れ(潜入)、肉眼では徐々に暗くなっていき、やがて見えなくなります。再び土星が現れる(出現)のは、月の輝いている側(明縁)からです。ただし、土星は1.0等級と比較的明るいものの、月の明るさにかき消され、肉眼では観察が難しいかもしれません。双眼鏡や望遠鏡を使うことで、出現の様子をより詳しく観察できます。
天体が潜入または出現する時間は、その天体の視直径によって異なります。土星は肉眼では点のように見えますが、視直径があるため、全体が月に隠れたり再び現れるまでに1分以上かかります。この過程を双眼鏡や望遠鏡で観察すると、より面白く楽しめるでしょう。一方、12月25日に起こるスピカ食のような恒星食では、恒星は点状に見えるため、潜入や出現が一瞬で起こり、土星食とは異なる見え方になります。その違いを観察するのも良いでしょう。
しばしば起こる惑星食
月は地球を公転する中で、天球上を東へ少しずつ移動していきます。その過程で、背景の天体を隠す「掩蔽(えんぺい)」または「食」と呼ばれる現象が起こることがあります。惑星の軌道面はほぼ黄道面と一致しており、月の軌道面も黄道面に近いため、惑星食は比較的頻繁に起こります。特に明るい惑星の食は肉眼でも観察しやすく、注目される天文現象の一つです。
ふたご座流星群が極大
月明かりに負けない明るい流れ星を観察しよう
2024年のふたご座流星群は、12月14日10時頃に極大(注2)を迎えると予想されています。今年は12月15日が満月のため、ほぼ一晩中明るい月明かりの影響を受け、暗い流星の観察条件は良くありません。
それでも、ふたご座流星群は明るい流星も多く流れるため、12月12日夜から15日明け方までの3夜では、通常よりも多くの流星が観察できるでしょう。特に極大夜となる13日夜から14日明け方は見ごたえがありそうです。13日夜は21時頃から流星が増え始め、14日0時頃には空の暗い場所で1時間に約30個の流星が観察できると予想されます。さらに、14日3時から5時頃には1時間あたり約40個の流星が見られる可能性があります(東京付近の場合)。
極大の前日である12月12日夜も、夜半を過ぎてから流星が増えると見込まれています。特に13日3時から5時頃には、暗い空の下で1時間に約20個の流星を観察できるでしょう。極大の翌日となる14日夜は、特に多く見られる時間帯はありませんが、21時から15日5時までの間に1時間あたり10~15個程度の流星が見られると予想されます。
観察の工夫
どの夜も明るい月が流星観察の妨げとなります。月明かりを避けるため、月と反対側の空を見るか、月が高い位置にある場合は少し低めの空を眺めるのがおすすめです。また、流星は放射点(注4)を中心に放射状に現れますが、どの方向にも出現するため、できるだけ広い範囲を見渡すようにしましょう。
暗さに目を慣らすには少なくとも15分以上観察を続けることが大切です。地面に寝転んだり、背もたれを倒せる椅子を使うと快適に観察できます。また、寒い季節ですので、防寒対策を万全に整えてください。安全に配慮し、周囲のマナーを守りながら観察を楽しみましょう。
月が木星に接近
見頃の木星と月の共演に注目!
日の入り後、南東の空でひときわ明るく輝いているのは、12月8日に「衝」を迎えた木星です。衝の頃の木星は約マイナス2.8等級の明るさで、1等星が多い冬の星座の中でも際立つ存在感を放っています。
衝とは、太陽系の天体が地球から見て太陽のちょうど反対側に位置する瞬間を指します。この時期の惑星は地球との距離が近く、視直径(見かけの大きさ)が大きくなるため、さらに光り輝いて見えます。また、太陽に照らされた部分が正面から見えるため陰が少なく、非常に明るく見えるのが特徴です。さらに、日の入り頃に東の空から昇り、真夜中に南中し、日の出頃に西の空に沈むため、一晩中観察できます。
12月14日には、この明るい木星に月が近づきます。満月を翌日に控えた月は非常に明るく輝いていますが、木星の輝きはその光に埋もれることなく、肉眼でしっかり観察できるでしょう。
地球の周りを公転する月は、夜空で少しずつ東へと移動しています。14日の夜には木星の西側にあった月が、翌日15日の夜には木星の東側へ移動します。よく観察すると、数時間のうちにも月の位置が変化していることが確認できるでしょう。
月が火星に接近
明るくなってきた火星を見よう
12月の夜遅く、高い位置で輝く木星に対し、東の空では徐々に明るさを増してきた火星がその存在感を際立たせています。
18日には、この赤い火星に月が接近します。マイナス0.9等級の火星は、明るい月の光に埋もれることなく、鮮やかに輝いて見えるでしょう。
火星は、2025年1月12日の地球最接近に向けてさらに明るさを増していきます。12月末にはその明るさがマイナス1.2等級に達し、一層目を引く存在となるでしょう。
2024年2回目のスピカ食
未明の空で春の輝星を月が隠す
冬至を過ぎて冬本番となる12月下旬、未明の東の空には早くも春の星座が姿を現します。25日の未明には、おとめ座の1等星スピカが月に隠される「スピカ食」が起こります。2024年に日本で観測できるスピカ食は、8月10日の夕刻に続いて今回が2回目となります。
今回のスピカ食は日本の広範囲で観察可能ですが、北海道の渡島半島南部を除く大部分では食が起こらず、月とスピカが接近するだけとなります。
この日の月は下弦を過ぎ、半月よりもやや欠けた状態です。スピカは3時過ぎに月の輝いている縁(明縁)から隠れ始めます(潜入)。ただし、スピカが1等星とはいえ、月の強い光に隠れて肉眼での観察は難しいかもしれません。双眼鏡や望遠鏡を使うとより見やすくなるでしょう。スピカが再び姿を現す(出現)のは、月の暗い縁(暗縁)からです。このときは、月の暗い部分から突然星が現れる様子を観察しやすいでしょう。
地点 | 潜入時刻※ | スピカの高度 | 出現時刻※ | スピカの高度 |
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仙台 | 3時24.4分 | 21.4度 | 4時06.8分 | 27.8度 |
東京 | 3時17.3分 | 20.9度 | 4時13.4分 | 29.9度 |
京都 | 3時11.6分 | 17.4度 | 4時13.8分 | 28.0度 |
福岡 | 3時06.2分 | 13.0度 | 4時13.2分 | 25.2度 |
那覇 | 3時06.0分 | 13.5度 | 4時14.9分 | 27.5度 |
12月8日の土星食では、土星が月に完全に隠れるまでや再び現れるまでに1分以上かかりましたが、スピカ食では、スピカが突然消えたり現れたりするように見えます(注)。これは、恒星であるスピカが惑星である土星よりもはるかに巨大な天体でありながら、非常に遠方にあるため、視直径(見かけの大きさ)がほぼゼロの点状に見えるためです。
月による掩蔽(食)が起こりやすい1等星
月は地球の周りを公転しているため、地上から見ると、星空を背景に少しずつ東へ移動しています。この際に月が背景の天体を隠す現象を「掩蔽(えんぺい)」または「食」と呼びます。月の通り道が近い黄道付近に位置する1等星は限られており、例えば、おうし座のアルデバラン、さそり座のアンタレス、そして今回スピカ食が起こるおとめ座のスピカなどが該当します。これらの星は、肉眼でも観察しやすい星食をしばしば引き起こす数少ない天体です。