3月になると、桜の開花情報が気になる季節となります。20日には春分を迎え、季節は冬から春へと移り変わります。
夜空では、東の方角にしし座をはじめとする春の星座が昇ってきて、季節の変化を実感させてくれます。一方で、西の空には冬の星座群が明るい星々とともにまだ残っており、さらに木星や火星も加わって華やかなため、つい西の空に視線が向いてしまうかもしれません。また、水星は8日に東方最大離角となり、観測の良い機会です。
14日には皆既月食が発生しますが、日本で月が昇ってくる時間には皆既月食はほぼ終了しています。北海道・東北地方(一部地域を除く)・関東地方東部・小笠原諸島では、満月が一部欠けた状態で昇る月出帯食が見られますが、月が十分な高さに到達する頃には通常の満月の姿に戻っていることでしょう。

5日 | 土星食(日本では一般に東北・関東・中部の一部地域以外で白昼に起こる) |
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7日 | 上弦 |
8日 | 水星が東方最大離角 |
12日 | 土星が合 |
14日 | 満月 / 皆既月食(日本では一般に北海道・東北地方(一部を除く)・関東地方東部・小笠原諸島で月出帯食が見られる) |
15日 | 水星が留 |
17日 | 彼岸の入り |
20日 | 春分(太陽黄経0度) / 海王星が合 |
22日 | 下弦 |
23日 | 金星が内合 |
24日 | 4時、土星の環の消失(土星が地球に対して横を向く) |
25日 | 水星が内合 |
29日 | 新月 / 部分日食(日本では見られない) |
惑星の見どころ

水星
日没後の西の低空に位置し、8日に東方最大離角となります。東京では4日から12日までは日没30分後の高度が10度を超え、観測しやすくなります。4日から12日の明るさはマイナス0.8等級から0.3等級です。その後は徐々に高度を下げ、25日に内合となり、以降は日の出前の東の低空に位置するようになります。下旬は太陽との見かけの位置が近く、観測は困難でしょう。

金星
上旬は日没後の西の低空に見えていますが、中旬以降は高度がさらに低くなり、観測が難しくなります。23日に内合となり、それ以降は日の出前の東の低空に位置するようになります。

火星
ふたご座を東へ移動しています(順行)。宵の南から南西の空に見え、明るさはマイナス0.3等級から0.4等級へと変化します。

木星
おうし座を東へ移動しています(順行)。宵の南西から西の空に見え、明るさはマイナス2.3等級からマイナス2.1等級へと変わります。

土星
上旬は日没直後の西の低空に位置していますが、12日に合となり、それ以降は日の出前の東の低空に位置するようになります。太陽との見かけの位置が近く、観測は困難でしょう。24日4時に土星の環の消失現象(土星が地球に対して横を向く状態)が起こりますが、日本では土星が昇る前の時間帯となります。
月が金星に接近

夕空で、三日月と明るい金星が並んで見える
3月2日の日没後、西の空に三日月を探してみてください。月よりも先にマイナス4.8等級で輝く金星が目に入るかもしれません。月は思っていたよりも細く見える印象を受ける方もいらっしゃるでしょう。繊細な細い月と、明るく輝く金星が並ぶ美しい光景をお楽しみください。
この日、望遠鏡で金星を観察すると、金星もまた月と同じような「三日月型」の姿をしています。月も金星も太陽の光を反射して輝いて見えるため、地球や太陽との位置関係により、光って見える部分が似たような形になるのです。
西の地平線付近の低い位置には、マイナス0.9等級の水星も見えています。しかし、東京では日没から30分後でも水星の高度は10度に満たないため、西の空が十分に開けた場所で、かつ雲などがない条件でなければ、水星を見つけるのは困難でしょう。
すばる食

すばるが月に隠される「すばる食」を見よう
3月5日の夜、西の空では「すばる食」という珍しい天体ショーが観察できます。すばる(M45、プレアデス星団)はおうし座に位置する散開星団で、肉眼でもかすかにその姿を確認できます。この日、月がすばるを隠す現象が起こります。
観察には双眼鏡があるとより詳細に見ることができるでしょう。22時頃から、月齢5.5の月の暗縁(光の当たっていない部分)にすばるの星々が次々と隠されていく様子を観察できます。東京では23時56分に月の入りとなるため、すばるが月から完全に出現する前に月が地平線下に沈んでしまいますが、月が沈むぎりぎりまで追いかけて観察するのも興味深い体験になるかもしれません。
月が木星、火星に接近

夕空で月が木星・火星に相次いで接近
3月6日から9日にかけて、上弦前後の月が明るい惑星のそばを次々と通過していきます。6日には、マイナス2.3等の木星と月が接近します。さらに、8日と9日には、月がマイナス0.1等の火星に近づきます。
今回、月と火星が最も接近するのは9日9時30分頃で、このとき火星は月から満月の1.5倍ほどの距離まで近づきます。しかし、この時間には日本では月も火星も地平線の下にあり、観察することはできません。
水星が東方最大離角

日の入り後の西の空で水星が観望の好機
「水星を見たことがある」という人は、意外と少ないのではないでしょうか。水星は太陽系の中で最も太陽に近い軌道を公転している惑星で、そのため空の中で太陽から大きく離れることがなく、見つけるのが難しい天体です。そんな水星を観察しやすいのが、「最大離角」の前後の時期です。
3月8日には水星が東方最大離角を迎え、この前後の期間は、日の入り直後の西の低空で比較的見つけやすくなります。東京では、3月4日から12日にかけて、日の入り30分後の水星の高度が10度を超え、観察に適した時期となります。他の地域でも状況に大きな違いはなく、水星を観察する絶好の機会となるでしょう。
今回の最大離角の時期には、水星よりやや高い位置に明るく輝く金星が見えています。金星を目印にすると、水星を探しやすくなります。
水星は空の低い位置に現れるため、西の空が開けた場所で観察するのがポイントです。また、低空に雲がなく、天候が良い日が観察には適しています。夕焼けの残る空で水星を見つけにくい場合は、双眼鏡を活用すると探しやすくなります。ただし、双眼鏡を使う際は誤って太陽を見ないように注意し、必ず太陽が沈んでから観察を始めるようにしましょう。