大阪・関西万博の会場で5月23日(金)24日(土)、オーストラリア初の宇宙飛行士キャサリン・ベネル=ペッグ氏(以下、ベネル=ペッグ宇宙飛行士)がオーストラリアパビリオンのカルチャーステージに登壇しました。

「持続可能な未来のための宇宙活用」

ベネル=ペッグ宇宙飛行士は、ドイツの欧州宇宙機関で宇宙飛行士訓練をしたのち、昨年国際宇宙ステーションのミッションの参加資格を取得。
「持続可能な未来のための宇宙活用」をテーマにしたイベントでは、地球の未来を持続可能なものにするために宇宙技術が果たす役割について語りました。
オーストラリアの宇宙開発の歴史
国土面積約700万平方キロメートルを誇るオーストラリア。
他の大陸から遠く離れた孤立した環境のため、高い解像度で星を観測することができます。 こうした地球上で他に類を見ない固有の地理的特性という移転を積極的に生かし、世界各国のロケットの打ち上げや着陸の拠点を提供しています。
オーストラリアの宇宙活動の拠点となる、オーストラリア州ウーメラにあるウーメラロケット発射場は1950年代からイギリス、オーストラリア、アメリカの観測用ロケットが打ち上げられ、地表に近い大気の上昇や宇宙に近い環境の秘密を解明してきました。 オーストラリアは宇宙開発の最も早い時期に、自国の人工衛星を打ち上げた国の1つとなっています。
また、アポロ11号のミッションでも、人類初の月面着陸を世界に向けてテレビ中継する、という重要な役割をオーストラリアが果たしました。
オーストラリアと日本の協力関係

日本の宇宙探査機はやぶさ2号。回収されたはやぶさ2号のカプセルの中には、小惑星リュウグウで採取した47億年前から存在した物質のサンプルが入っていました。
実は、はやぶさ2号のカプセルの安全な帰還と回収の成功に、オーストラリアが大きな役割を果たしています。
はやぶさ2号は、地球の大気圏に帰還し、オーストラリア州ウーメアの広大な赤土の上に、無事に着陸。その物質の元素の研究をもとに、私たち地球上の生命の解明が進められています。
このミッションの成功は、宇宙や科学にとって大きな成果でもあり、オーストラリアと日本が宇宙で実現したパートナーシップの力を、はっきりと証明してくれた出来事でもあります。
今後、オーストラリアと日本が連携して行う火星衛星調査MMX計画も予定されています。 火星の衛星フォボスからサンプルを持って帰るという計画で、私たちの太陽系の成り立ちの解明が進むことが期待されています。
将来の宇宙開発計画
オーストラリアの初めての月面探査機ルーバーは、オーストラリア宇宙庁がリーダーシップをとって開発し、NASAと共に月へ向かうことになっています。 月の土を調査し、NASAと協力して人類が月面に長期滞在するために欠かせない技術の開発に貢献する、という任務です。
ルーバーは、オーストラリアで最も先進的なロボットプロジェクトの一つとして現在進行中で、資源産業や採掘産業の分野から発展し、世界的に有名になったオーストラリアの遠隔操作技術を活用しています。
宇宙産業というものは変化が激しく、スピーディーで先進的だという特徴があるため、経済のあらゆる文化にチャンスを生み出します。 ロボティックスとオートメーションは、オーストラリアや諸外国の社会と経済を関係に、大きな恩恵をもたらす可能性があります。
一方、地球の上でも、ロボティクスやオートメーションと宇宙を結びつけることによって、地球上での技術力をさらに高度にし、これまで不可能だったさまざまな分野の間で、シナジーやコラボレーションが生まれています。
現代の課題と宇宙開発の重要性

オーストラリアは、地球の持続可能性を高めるという壮大な目標を持って、宇宙テクノロジーの活用に取り組んでいます。 その目標は地球にとどまらず、地球に一番近い隣人、月の探査にまで広がっています。
宇宙探査によって、地球に住む私たちの世界を、生活をより良くする発見があったり、新しい技術が生まれたりします。
宇宙探査には、これら全ての分野のスキルや能力を投入しなければなりません。
そして月の先に向かう目標は火星。月は将来火星への発射台となり、さらに遠い宇宙の探索ができるようになります。
火星に到達できれば科学が一層進歩し、地球外生命の探索も進むでしょう。
私たちは何者なのか、宇宙のどこにいるのか、そこに行くことができれば、壮大な物語と私たち人類が求める答えがあるかもしれません。
そして未来へ
世界最古の天文学をもつと言われるオーストラリア。
オーストラリアの古代人は6万年もの間、ずっと空を頼りにしてきました。星を見て自分がいる場所の位置を把握し、時間を知り、知識を伝え、これから起きる変化を予測しました。この6万年の延長線上にある現代。
ベネル=ペッグ宇宙飛行士はオーストラリアの古代人の伝統を受け継ぎ、世界を取り巻く重大な問題を解決するため、今日も宇宙で世界を変えられる答えを探し続けています。
オーストラリアパビリオンにはオーストラリアの豊かな空気を感じられる没入型体験をすることができます。
オーストラリアから見られる南半球の星空を眺めることもできるので、はるか昔にオーストラリアの古代人も眺めた星空を眺めながら、世界を変えられる答えをあなたも一緒に探してみませんか。
キャサリン・ベネル=ペッグ
オーストラリア人宇宙飛行士であるとともに宇宙システムエンジニア。
2023年にドイツで欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士訓練を開始し、2024年4月には国際宇宙ステーション(ISS)ミッションへの参加資格を取得。
ベネル・ペッグ氏は、オーストラリア国旗の下で宇宙飛行士資格を得た初の人物。科学および工学の分野で4つの学位を有し、有人宇宙飛行を通じて研究者や産業界への貢献を目指すとともに、次世代に夢と希望を与えることを使命としている。
