【ハッブル宇宙望遠鏡】珍しいタイプのブラックホールが“恒星をつまみ食い”」

NASA は 2025 年 8 月 8 日の画像記事で、NGC 6099 の外縁部にある明るい X 線源 HLX-1 を紹介しました。これは 中間質量ブラックホール(IMBH) の有力候補で、ハッブル宇宙望遠鏡(可視光)とチャンドラX線観測衛星(X 線)の共同解析により、巨大楕円銀河の近くにある緻密な星団内に位置することが示されています。対象はへルクレス座の方向、地球から約 4 億 5,000 万光年の距離にあります。

画像出典:Science: NASA, ESA, CXC, Yi-Chi Chang (National Tsing Hua University)/Image Processing: Joseph DePasquale (STScI)
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“つまみ食い”の現場──潮汐破壊イベントの兆候

HLX-1 は銀河中心から約 4 万光年離れた位置にあり、X 線スペクトルの温度は約 300 万度。これは恒星が引き裂かれる潮汐破壊イベント(TDE)と整合的です。ハッブルは周囲に小型で緻密な星団を検出しており、星々は数光月という近さに密集しているため、ブラックホールが“餌”に困らない環境であることが示唆されます。

2009→2012→2023:明るさの推移

この X 線源は2009 年にチャンドラが発見、その後 XMM-Newton でも追跡観測が実施されました。明るさは2012 年に 2009 年比で約 100 倍へ上昇し、その後2023 年まで減光が続いたことが報告されています。これは、捕獲した恒星を引き裂いて形成されたプラズマ円盤が時間とともに変動している、あるいは降着円盤が断続的に“点滅”している可能性を示します。

IMBH とは?――宇宙における“欠けていたピース”

IMBH は太陽の数百~数十万倍という質量域にあると考えられるブラックホールで、恒星質量級超巨大質量級の間を埋める存在です。一般に静かで見つけにくいため、“星を食べている最中”を捉えることが鍵になります。今回の HLX-1 のような事例は、銀河中心の超巨大ブラックホールがどのように成長してきたかを解くうえで、重要な手がかりを与えます。

参考・出典

原文筆者:Monika Luabeya(NASA)

翻訳:宙クリップ編集部

宙クリップ

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